『Shogun 将軍』のエミー賞について

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衣装デザイン賞。視覚効果賞。スタント・パフォーマンス賞。ヘアースタイリングとメイクアップ賞。誰もが熱望する主演男優賞と主演女優賞。そしてテレビ界での最高の栄誉:作品賞。第76回エミー賞では、FXシリーズ『SHOGUN 将軍』は25ノミネートのうち見事に18部門を受賞し、史上最多のエミー賞を手に入れた。

写真提供:NBC News

『SHOGUN 将軍』受賞一覧はこちらでご覧になれます。

この総なめは軽く見ることではない。『SHOGUN 将軍』は全てのキャストとクルーの血と汗と涙を要する大作品だった。俳優及びプロデューサー真田広之が主演男優賞受賞時のスピーチで言った通り、「東と西が(壁を越えて)出会う夢のプロジェクト」は彼らの献身と努力により築くことができた。才能溢れて経験豊富なハリウッドのキャストとクルーは、日本から呼ばれた時代劇専門のクルーと共に各パートで協力し、そのコラボレーションにより小道具・衣装・ヘアとメイク全ての歴史的正確さをスクリーン上で描くことができた。

『SHOGUN 将軍』の総なめは、アメリカの授賞式でより国際的な視点を代表するための新たな一歩を示すシリーズの一つだ。封建時代の日本を舞台にしたネットフリックスのアニメシリーズ『ブルーアイ・サムライ』は、日系アメリカ人のキャストとクルーによって制作され、今年のエミー賞でアニメ賞を見事に受賞した。『イカゲーム』と『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も同じく、主にアジアの人や言語を描いている作品であることに関わらず、沢山の賞を過去に受賞した。現代の映画とテレビシリーズとなると、アジア系アメリカ人及び全体的なアジア人のディアスポラにとって良き時代へと変わってきている。コロナ禍によるアジア人向けの憎悪犯罪が増えた辛い現代の中、このポジティブな表現は以下にも重要となってきた。

写真提供:IMDb

これらの映画やシリーズは、よりアジア人の作者や協力者を主とすることで、西の既成概念や汚いオリエンタリストの考え方を除き、新たな視線から我々アジア系コミュニティを描いている。アジアの歴史、文化、人物などをより正確で真正に描いている。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が「厳しいアジア人の親」の既成概念をオリジナルでさらに魅力的な物語に変えた通り、『SHOGUN 将軍』はトム・クルーズの『ラスト サムライ』のような一般的な侍物語を描くより、ジェームズ・クラベルの小説を今まで観たことのない正確さと美しさを含めてスクリーン上で描いた。クラベルの書いた登場人物の名前はフィクションだが、この物語では現実の日本の歴史を実現させている。

それはなんと見事なパフォーマンスだったのでしょう!真田広之が演じたストイックな吉井虎永は、最後まで視聴者をハラハラさせた。動機は何だ?何を考えていた?誰を信頼し、誰が敵だったのか?彼の演技の重厚さと狡猾さの両方が、将来の日本の統一者という非常にニュアンスのある堂々とした描写につながった。真田氏と同じく、主演女優賞を受賞した澤井杏奈も心を惹く演技を披露した。虎永に仕えるキリスチャンの通訳者、戸田鞠子を演じた彼女の演技は、感動的であると同時に胸を打つものだった。シリーズの中で彼女が一番良くできていた登場人物だったと私は思う。鞠子は忠実で賢く、自分の使命ははっきりしていたが、あの時代の社会の家父長制から抜け出せない人質でもあった。『SHOGUN 将軍』が放送されてから、多くの視聴者、評論家、そして有名な女優さんは澤井氏のパフォーマンスを褒めてきた。真田氏と澤井氏、この重要な二人がいなければ『SHOGUN 将軍』はこんなに立派なシリーズにはならなかったでしょう。

写真提供:FX

演技となると、エミー賞を受賞するほどの価値があることは当然だ。ブラックソーンと仲良くなるスペインの船員ロドリゲスを演じたネスター・カルボネルは、ゲスト男優賞を受賞した。樫木藪重を演じた浅野忠信と石堂和成を演じた平岳大は、二人とも助演男優賞でノミネートされたが、『ザ・モーニングショー』のビリー・クラダップに負けてしまった。『ザ・モーニングショー』を観たことがないため、クルダップの演技は受賞するほどの価値があったかどうかは自分自身はっきり比較できないが、共演者をしのぐ裏切り者の藪重を演じた浅野氏が受賞しなかったことには正直驚いた。しかしこの判断が間違いだったかどうかは人それぞれ自分で決めるべきだ。

『SHOGUN 将軍』は、一流のキャストと歴史的ディテールへのこだわりで、エミー賞の全受賞(そしておそらくそれ以上)に値する作品であることを明らかに示したが、テレビ放映された授賞式の後、一部の否定的な声が上がってきた。イギリス新聞『ガーディアン』のある注目された記事では、『SHOGUN 将軍』の 「壮大な演技、演出、脚本 」にもかかわらず、エミー賞を独占したのは 「間違いなく、ここ数年で授賞式を見た中で最大の不意打ちだった 」と主張している。はぁ…⁈

写真提供:The Japan Times

この記事は、『SHOGUN 将軍』のエミー賞 「独占 」が 、「他の価値ある候補が締め出された 」理由であるという非常に弱い論調に続いて、俳優ゲイリー・オールドマン主演の『窓際のスパイ』シリーズの方がノミネートされた賞にふさわしいとほのめかしている。記事はまた、非常に関係のないことだが、いくつかのシリーズが 「間違ったカテゴリーにノミネートされた 」ことにも触れている。もし『一流シェフのファミリーレストラン』がドラマ部門に移動したら、もっと多くの賞を受賞できると本当に思っているのか?

結局のところ、単純な人種差別がその由来だと思う。ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がアカデミー作品賞を受賞したときにも、同じことが起きた。英語でない、字幕が多すぎる、ストーリーに意味がない、より広い観客(つまり白人)にアピールしていない。いつも同じような飽き飽きした議論から始まり、率直に言うと私はそれにうんざりしている。『一流シェフのファミリーレストラン』が数多くのエミー賞を受賞すると、万人は一年中それを褒めるが、『SHOGUN 将軍』が同じことをすると、突然それが問題になる。

『ガーディアン』の記事は、『SHOGUN 将軍』が何らかの形で賞委員会から不当な優遇措置を受けたことを強くほのめかしているうえ、シリーズ自体が有力高すぎるとレッテルを貼っている。このような考え方は、このシリーズの制作に費やされた実際の努力、献身、そして愛情を著しく損なうものであり、危険でもある。『SHOGUN 将軍』の根底にあるのは、自分たちが創作しているものを愛してやまない献身的なチームではなく、お高くとまったショーランナーたちだということを暗に示している。「スナッブ」(snub)とは定義上、明らかに受賞にふさわしい候補者が敗れることである。ドラマ部門の他のノミネート者も優れた候補者であったことは確かだが、「SHOGUN 将軍」が劣っていたとか、ふさわしくなかったという馬鹿げた考えを裏付ける証拠は一片もない。

写真提供:The American Society of Cinematographers

『SHOGUN 将軍』の制作に関わった人々は、このシリーズに命を吹き込むために10年近くの歳月を費やした。台詞と字幕翻訳は見事で、英語圏の視聴者にも日本語の視聴者にも響く。生々しく感情的な会話や壮絶な戦闘のシーンなど、演技はまさに比類ない。日本人や長年の時代劇ファンの厳しい目で見ても、細部に至るまで本物であることが証明されている。『SHOGUN 将軍』はエミー賞のひとつひとつに値する作品であり、くだらない些細なコメントはその功績を奪うことは決してできない。

メイン画像提供:Deadline

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