文:ベンジャミン・ローズ (Read in English)
訳:スナイダー・オリビア
『SHOGUN 将軍』の第4話「八重垣」では、ストーリーの内容は文化・緊迫・ロマンスのテーマをより深く描いている。一方、樫木薮重の裏切りの画策が失敗し、状況は激烈な方向に向かって悪化する。ショッキングなファイナルシーンでは一体何が起こる⁈
スコア:95点
戦国らしき行為
「戦が始まる」
前話の最後のシーンでは、虎永とブラックソーンが岸まで競争する様子を船から見て鞠子は微笑んでいた。だが第4話「八重垣」のフィナーレはそう幸せな様子ではない。「八重垣」では登場人物の展開が大きく進み、鞠子とブラックソーンの間のロマンチックな関係も始まるが、鞠子が最後に呟く言葉は前話ほど平和な予言ではない。
今回の刺激的なファイナルシーンでは、吉井長門(すなわち天才坊や・虎永ジュニア)は自分の能力と度胸を発揮するため、第3話で大阪城で侮辱された父の敵を討つ目的で根原丞善に一撃を放つ。だが長門のやり方は単純に馬鹿で無謀な作戦。結果として虎永の今までの慎重に計画した作戦がめちゃくちゃになってしまった。賽は投げられた、つまり事を始めてしまった今となっては、もう断固として実行するのみである。刀を抜き放す時がやってきた。
色々な意味で、これは適切な結果。『SHOGUN 将軍』が信奉している義理・名誉・敬意・自制心などの価値観に、人間の狭量さが混じる時の壊滅的な実例でもある。ロマン哲学者セネカが書いた悲劇では、支配者が禁欲主義の価値観を踏みにじった世界で起こる残虐行為と恐怖が描かれている。『SHOGUN 将軍』の第4話も同じく、その社会を偉大なものに築き上げる価値観と、愚か者の手にそれが入るとどれだけ早く失われるものかを丹念に描いている。
「愚か者」といえば、樫木薮重と甥の央海もこのリストに足すべき。薮重の画策の悲惨な結果は、自分だけではなくみんなにとって甚大なダメージを与えるでしょう。網代を支配する央海はブラックソーンに排尿するような行動からは卒業したが、叔父のさらに危ないバージョンになりそう。だが戸田広松が大阪に残ったことと、虎永が関東で支援を集めているためこのエピソードにあまり登場していないことから、薮重と央海の行動は不可避なことだったかもしれない。
女たちには分別がまだあるが、「八重垣」ではチーム虎永の男たちのなかで一番汚職のものが自分自身の裁量に任されている。この状況ではしくじることしかできない。彼らの大失敗はこの150年間の戦国時代の大混乱を完璧に表すうえ、そもそも何故この状況を整理する将軍の人物が必要なのかを明確にしている。

写真:薮重を笑いものにする虎永
薮重のついてない日
エピソードは虎永が網代に到着するシーンで幕を開ける。ブラックソーンが旗本となった結果、奥方が必要となる(彼はまだこの身分とはどういうことなのか気付いていないが...)。ここでその役割が命じられ、激しく反対する藤と、殿への義理に専心する鞠子の間に一方的な議論になる。藤はその役割に反感を抱くが、鞠子は彼女の苦境に対して同情しない。藤は代わりに尼になる許可を必死で頼むが、断られる。6ヶ月後に切腹をすると誓うと、虎永はこれを受け入れることにする。
だが他の問題が起きている。船が網代の港に近寄るなか、長門は虎永が大老衆から辞されたことを漏らす。それを聞いて驚く薮重はパニックになり、虎永と吉井家は破滅だ、伊豆も滅亡だと焦る。「無礼を承知で申し上げる。事ここにいたっては直ちに切腹されるがしかるべき策にございまする」。
虎永は「ありがたい申し出じゃが、正式なご沙汰が届くまではわしの首も胴につなげたままにしておこう」と答える。彼らは網代の岸に到着し、薮重の侍と足軽を含む軍勢に迎えられる。ブラックソーンは久しぶりに央海と再会し、二人は通訳されない(いや、できない)悪口をお互いに言い合う。更なる裏切りと反逆を避けるため、薮重の裏をかく必要があると気付く虎永は、薮重の軍勢を前にしてはっきりとこう告げる:
「伊豆の侍たちよ!我が朋友にして一蓮托生の同志、樫木薮重殿の軍勢に目通りがかない喜ばしく思うぞ。今や黒雲が日の本を覆わんとしておる。我らはおごり高ぶった逆賊から日の本を守らねばならん。太閤殿下のご遺志を汚す者どもに天誅がくだされんことを!忠義のために戦う者たちよ、この吉井虎永そなたらの志に頭を下げ申す!」
ー吉井虎永
これを聞く軍勢から歓声が湧き起こり、薮重は逆に浮かない顔をする。この不機嫌さは自分の軍勢が「虎永様!おー!」と万歳しているからでしょう。虎永は直ぐに船に戻り、関東へ向かう。彼がいない間、虎永ジュニアが代理を務めることが定められる。「もそっと安い酒を買えばよかった」と央海の母が愚痴る。

左から:薮重、彼の羽飾り、そして央海
網代のエッジロード
ブラックソーンは網代に戻ったことで直ぐに自分の乗組員を取り戻し、エラスムス号に乗って日の本に別れを告げることができると信じていたようだが、船員たちは江戸に連れて行かれ、虎永の所有物に近いものになっていると知る。近いうちに船に乗って日本から去ることは完全に不可能。薮重の新しい大砲隊の鍛錬を指導することに同意したブラックソーンは、今その約束を守らなければならない。旗本としてランクアップした按針には、自分の家、給料、そして藤が与えられる。
日本に来る多くの白人男性の最大の夢が叶えられたことにも気付かず、ブラックソーンは通貨の「石」を聞き外し、「ククなどいらない」と不機嫌そうに言い、激しい勢いで去る。
その間、薮重は央海、遊女のお菊、そして眼帯をしている男と慰め会を開いている。虎永にやはり負けてしまったことについて不平を言い続ける。裏切りの作戦が成功しないことに対して不満を感じ、央海に南蛮船のことをばらした「不届き者」がまだ見つかっていないことをめそめそと愚痴る。「わしは立つ瀬がない!」と泣き言を繰り返す。石堂と虎永、二人揃って上手に裏切ることはさすがにできなかった。
「負け犬の陣営に加わるほかない有りさまじゃ。旗本面した蛮人と大砲隊を鍛錬して?どうすんじゃこれ?」
ー樫木薮重
これまでの薮重のキャラクターのアピールは、彼の無能さ、悪、そして意外と好感の持てる人物である混ざった性格でもあり、浅野忠信のいたずらっぽい笑みと光る目にどうしても惹かれる。世界を手に入れる夢を持つが失敗ばかりする薮重には面白いところもあるが、人間を生きたままゆでる悪人でもある。第4話で次々へと計画が失敗していくなか、焦る薮重を観るのは結構楽しい。彼の苦労からシャーデンフロイデも感じるが、このまま死んでしまったら将来の薮重の行動の楽しみがない。最後まで生き残るが、特に理由もなくフィナーレで虎永に殺される結果が一番望ましい運命かもしれない。
今はまだ何が起きるか分からない。だが央海は早速叔父より賢いものだと証明し始めている。虎永は今網代にいないうえ、この6ヶ月の間に彼が死ぬ可能性も高い。虎永が帰ってくるまでは、大砲隊は薮重のもの。それを好きに使えば良い。「ウィッチャー」のヴェセミルの名言に例えると、「絞首刑になりそうだったら、先にお水を一杯頼め。その合間に何が起きるか誰も分からない」。

写真:訓練場にいるブラックソーンと鞠子
八重垣
ブラックソーンは綺麗な家と綺麗な正室が与えられたのにまだ拗ねている様子。お庭の苔を踏んでしまい、鞠子に注意されるが、文化と考え方の違いに中々慣れずイライラする。ここで鞠子は藤の夫忠義と息子の処刑について語る。「八重垣」とは、「必要な時に避難できる頑丈な壁」。日本人がこの死が遍在する土地で社会生活の波乱を乗り切るために、情念や状況に隷属することなく構築した内的な心理的聖域である、とブラックソーンに説明する。
八重垣のコンセプトが「禅」ぽく思えたら、それは由来が神道と仏教の考え方の間から生まれたものにあるから。8世紀に書かれた「古事記」のスサノオの句にも「八重垣」の観念が描かれている。その哲学自体はマインドフルネスだが、サバイバルの方法でもある。鞠子は最後にこう伝える:
「礼儀正しさや複雑な作法にだまされてはなりません。私たちの心ははるか彼方」
ー戸田鞠子
ブラックソーンはこれを理解しているのかはまだ不明。今までのブラックソーンの活動家としての行動は彼の役に立っているが、虎永との「契約」から教わったように、地方政治となればまだ何も分かっていない。この国で生き延びたいと思えば、微妙さを覚える必要もある。

写真:「微妙さ」を表すブラックソーン
伊豆の大砲
いよいよブラックソーンが旗本としての活動を始める日がやってきた。だがその朝は央海がブラックソーンの家を訪れ、訓練場では武器は携帯禁止だと言い、「鉄砲を渡さぬか!」と厳しく命じることで問題が起きる。ブラックソーンは央海が元々大嫌いであるうえ、央海もその憎しみに値する行動しかやってきていないが、藤が按針から鉄砲を預かることで一旦状況を静める。ここで央海は次に藤に鉄砲を渡せと命じるが、藤は鉄砲を彼に直接向けて「お引き取りくださりませ」と丁寧に伝える。それでは訓練場へ。

写真:恐るべき藤
第3話では、ブラックソーンは自分がただの船員であることをさらけ出し、欧米の歩兵戦術をほとんど知らないと言っていたが、日本では銃の使い方さえ教えてあげれば何とかなる!と信じているようにみえる。だが日本では既に50年前にポルトガルの銃が伝来し、日本人はみんな扱い方に慣れていると鞠子は按針に説明する。
「まずは大戦争の説明から、マルタ包囲戦…」とブラックソーンは次に説明しようとするが、彼はその戦が起きた1540年には生まれてもいなかった。侍たちは彼がじかに体験した戦争経験から戦術を教わることを望んでいる。これでもうゲームオーバー?言語の壁と鞠子のためらう通訳によりブラックソーンには答えを考える時間が少々与えられる。彼はやっとこう伝える:
「僕の意見を伝えて欲しい。鉄砲の戦術よりイギリス式の海戦術が役に立つと。大阪城は難攻不落、刀や火縄銃での包囲戦は何ヶ月もかかる。だが数千キロ沖に停泊した船と大砲があれば城壁を突破できる。敵の矢もなんのその」
ージョン・ブラックソーン
だが周りの日本人はそう簡単に説得されない。「大砲が的に当たるはずがない、ポルトガル人が何年も前に試しておる」とブラックソーンを疑う。だがブラックソーンが持って来た大砲はより正確であり、長距離大砲戦争行為が可能となる。ブラックソーンはイギリス大砲の使い方を虎永の軍隊に教えようと、数週間又は数ヶ月をかけて鍛錬を行う。時間が流れる間、鞠子とより仲良くなり、日本語も少し話せるようになる。だがエラスムス号で見つかった航海指針日誌を翻訳し、マニラでの犯罪を知る鞠子は政治に関わるなと諭す。

写真:根原丞善を説得する薮重
薮重4:コンセクエンス
だが平和な時間は限られている。ある冬の日、根原丞善は悪い知らせを伝えに網代まで来る。大老衆は薮重が大阪に戻り、処刑されることによって忠誠を誓うことを要求している。これを断れば大老衆に対する戦争行為となる。これを聞く薮重はもちろん焦るが、前話と同じく、このような状況には慣れているとでも言えるでしょう。薮重は迫ってくる戦で「キリシタンの金玉を縮みあがらせる」ブラックソーンの大砲を石堂側のために使うことを約束し、翌朝に大砲の演習を見せてから大阪に戻ると根原丞善を説得する。
丞善はあまり演習を楽しみにしているようには見えないが、元「友」のリクエストをしょうがなく受け入れる。一方、長門は薮重の行動が完全に自己保存のためだと見破っている。虎永には薮重の裏切りが止まらないと既に伝えている。ここで長門はこの状況を自分で解決することを決心する。
「八重垣」では、薮重の選択肢は数少ない。でも央海の場合はそう絶望的な状況ではない。央海は長門を誘って一緒に酒を飲み、「不肖のせがれ」や「未熟者」ではなく結果を出せる立派な侍だと長門を上手く説得する。央海の励ましの言葉を聞く長門は、素早く吉井家の名を守る計画を考える。その計画は自分の能力を父の前で示すためでもある。

写真:枕を交わす??
雨と雲
ブラックソーン一家の夕飯では、藤と少し気まずい武器の交換が行われる。会話の流れはこんな感じ:
ブラックソーン(ポルトガル語):「藤に鉄砲を感謝の気持ちとして受け取ってほしい」
藤(日本語):「ひょうたんから駒が出る、とはこのことでござりましょうか?」
鞠子(日本語):「按針様なりの優しさでござりましょう」
藤(日本語):「亡き父の形見です。私は刀も持っておらぬお方の正室にはなれませぬ」
ブラックソーン(ポルトガル語):「受け取れない」
鞠子(ポルトガル語):「お受け取りを!」
国際交流とはこういうことだ。「武器交換ディナー」が済んだ後、ブラックソーンは泳ぎに近辺の池に行く。そこで通りかかる鞠子に見つかるが、彼女は裸の蛮人を目撃しても特に抵抗しない。二人でロンドンに行けば一緒にどう時間を過ごすか、恋人同士の愛の言葉っぽい会話をする。驚くことにブラックソーンの「鞠子を連れて女王に会いにいく」の口説き文句は効き目が強い。数時間後、鞠子は眠る蛮人の部屋にこっそりと入り、二人は「枕を交わす」。

写真:内戦に参加してみませんか?
えっ?!
翌朝、朝食を食べる間鞠子は「遊女がお気に召したようでよかった」とブラックソーンに軽く言う。彼はそれに少し驚くが「心のこもった贈り物だったよ」と答える。藤は二人を怪しげに見つめるが、ブラックソーンが少し苦手なため恐らくこれはなかったことにしてくれるでしょう。
それに、その日にはもっと差し迫った予定がある:根原丞善に見せる大砲の演習。ブラックソーン、鞠子、薮重、そして残ったチーム虎永は丞善と訓練場で合流する。「此度の演習では大砲が野原を飛び越え、的を正確に爆破する様子をご覧いただく」と薮重は丞善に説明する。続いて長門に開始の合図をする。
長門は馬に乗ったまま近寄り、急にみんなに「退け!」と命じる。大きな声でこう宣言する:
「根原丞善!己にはもはや我慢がならぬ。父上の名を侮辱した報いじゃ、今こそ成敗してくれる!」
ー吉井長門
刀を抜く長門を見て丞善はかすかに笑う。戦を実際に経験したこともないこのちびには一体何ができる?「一体どうなされた?刀を納めなされ!丞善殿は五大老のご使者にござるぞ!」と薮重は長門に向けて叫ぶ。これは完全に反逆行為。だがここから状況は本当に悪化する。長門は丞善と刀で戦いに来たのではない。刀を振って隠された大砲に合図をし、その一発で丞善の侍たちはバラバラに飛ばされる。二発、三発目で丞善の腕も馬も撃たれる。「これは誰が命じたことじゃ⁈」と驚いた薮重は怒鳴る。「それがしじゃ。吉井虎永の息子吉井長門が命じたことじゃ!」と長門は誇り高く答える。刀を振る長門の様子はまるで夏祭りで光る刀のおもちゃを買ってもらった子供のようだ。
「とんでもない挑発行為にござるぞ!」と薮重は激しく怒る。「この件はお父上にご注進いたしますぞ!」
「構わぬ。むしろ父上に知っていただきたい」と長門は自慢げに答える。
「これは侍の戦い方ではない!」まだ生きている丞善は血まみれの状態で地面でもがき、嫌悪感溢れる言い方で「恥を知れ!己ら…」と言い切る。
長門は丞善に近づき、首をはねる。
戦が始まる。
「八重垣」は、『SHOGUN 将軍』が登場人物の展開を中心にしている時がシリーズのピークであることを表している。描かれているバイオレンスは少量であっても苛烈であるが、このシリーズはそれを生み出す人間関係や、政治に対する鋭い見方、最善と最悪の計画がいかに成功するか、あるいは失敗するか、そしてその人間的犠牲の重要さなどのテーマを活かしている。
写真提供:FX
イラスト提供:ザ・パス/絵:ナタリー・ビエラット
ベンジャミン・ローズはワシントンD.C.出身の詩人。『エレジー・フォー・マイ・ユース』と『ダスト・イズ・オーバー・オール』を2023年と2024年に発刊。アメリカカトリック大学で英語学を専攻し、2023年にオへーガン詩賞を受賞。2019年から「ザ・パス」のブログを編集している。彼の本はこちらから購入可能。
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