【ネタバレレビュー】『Shogun 将軍』第8話「奈落の底」

文:ベンジャミン・ローズ (Read in English)

訳:スナイダー・オリビア

『SHOGUN 将軍』の第8話「奈落の底」は天才的な結末に進めていく、凱旋したエピソードである。ストーリーはこれまでの後半のエピソードを久々に超えて勢いを増す。悲劇的な損失と重要な登場人物の壊滅的な死のなか、虎永は最大の計画を暴露する。

スコア:100点満点

司祭と遊女

4エピソード分の時間を網代で過ごしたことで『SHOGUN 将軍』のストーリーは少し行き詰まった感じもしたが、第8話ではやっとシリーズの勢いを取り戻し、ワンパターンさを変えて積極的にストーリーを前に進めることができた。第7話で起きた虎永の降伏に対するブラックソーンの怒りの爆発の結果として、按針は旗本の格を無くしたが、自分の船と乗組員を取り戻すことが許される。長門の死に続けて、虎永とその家臣は葬式を行うため江戸に戻ることが認められる。虎永は病にかかり、絶望に駆られた様子だ。大老衆と戦うどころか、殿は何度も家臣に迫る死を引き受ける意志があると繰り返す。

これを聞いた家臣共の中には、異議を唱えるものもいる。長門の葬式では、降伏に反対する虎永の武将が数人抗議の印として鎧を身にまとう。虎永の軍事会議同士の飲み会では、長門の暗殺未遂を褒める唯一の家臣は央海。無謀な行為ではあったが、長門は「ご自分の命をたった一つのものに懸けておられた。ご主君に、虎永様に」と、父上の大義のために戦ったことが勇敢であったと央海は抗議する。

このエピソードは前話よりも樫木たちに展開の時間を与え、央海の揺れる忠誠は注目に値すべきストーリーの脇筋となる。吉原遊郭となる土地を測量するお吟と一緒に行く央海は、「忠義がかえって不忠となる、そういう時もあるとは思わぬか?」とお菊に問うと、お菊は「思いませぬ」と答える。前話でお吟に誓った約束は、虎永はきちんと果たしている。笑える皮肉な展開で、第3話でマルティン・アルヴィト司祭に約束したキリスタン教会を建設する土地も与えているが、それは遊郭の土地の近辺にあるもの。将来は司祭と遊女が共存することになる。さすが虎永様(笑)。

あり得ない盟友

虎永のインナーサークルから外れたブラックソーンは、日本での夢を諦めて船を取り戻し、ポルトガルの黒船に打撃を与えてからイギリスに帰ることを決する。だがその予定はそう上手くいかない。放っておかれたエラスムス号のオランダ船員たちは、江戸の一番貧乏で汚い地区で道楽するばかりの毎日を過ごしている。この酔っ払って売春婦と遊ぶ姿を目撃するブラックソーンは彼らの下品な行動にうんざりする。日本文化に半分同化した着物を着ているブラックソーン(「スカートを脱げよ!」)と再会する船員は、彼の盛んな暮らしを恨む。ブラックソーンは自分の名誉を追求することで乗組員のみんなを見捨てた、とのけ者にされて船員に強く𠮟られる。

ブラックソーンはその船員との急な殴り合いで勝った後、昔の生活に戻れないことを理解し、完全に想像外の方法で復帰に挑戦する:薮重との盟約。これを聞く薮重の当初のリアクションは、思っていたより理解ある態度。ブラックソーンに似て、自分の運命を自分の手で決めるサバイバー感を持つと褒め言葉を聞いて説得されるようにみえるが、央海に「恥ずべきことにございまする」と言われる際に、殿への忠誠を理由としてブラックソーンを断る。これでブラックソーンの大義は救いようのない、いや、存在しない夢となる。船員たちと同じ、日本で立ち往生した酔っ払いの無関心な人生が彼の運命なのか...?

和解しにくい不和

どっちにしろ、ブラックソーンの運命は文太郎ほど悲しいものではないでしょう。今までのエピソードで一番感動的だと思えるシーンでは、文太郎は鞠子のためにお茶をたてることでお詫びを入れようとする。虎永の降伏に従って死ぬよりも、「共に死のうではないか」と鞠子に提案する。

だがどれだけ思いやりのある行動でも、鞠子はそれを受け入れない。鞠子は文太郎と一緒に死を迎えることではなく、死ぬことで文太郎の「手の届かぬ生き方」を望んでいたと丁寧に説明する。「私はお前様とかように死するぐらいなら、千年生かされたほうがましでござりまする」。文太郎の家庭内暴力を振り返ると鞠子の返事は正当化される反応だが、鞠子が去った後に涙を流す文太郎をみて、ついつい彼が可哀想だと思ってしまう。このシーンは文太郎を演じる阿部進之介の最高の演技だ。文太郎の悲しみは自分の行動によって得た負担だが、それはそれで視聴者の心を打つ。

尊い犠牲

だが第8話の結びとなる刺激的なシーンは、広松の切腹。この瞬間はあまりにもショッキングで残酷だったため、実際に私のスクリーンにそれが描かれていると信じられなかった。虎永が自分の降伏のニュースを報告するためアルヴィト司祭を大阪に派遣した後、広松は虎永が虚勢を張っていると割り出し、戦い続ける意志を告げる。だが降伏の日が近寄るなか、虎永は家臣と武将を集め、殿と共に降伏すると書状に署名せよと命じる。多くの家臣はそれに反対し、広松は今までの「戦を道半ばで放り出されるおつもりか?」と問いただす。「そのお気持ちを変えぬとあらば、拙者今ここで腹を切りまする」と虎永に向けて言い切る。既に決断を下している、譲らないと固く言う虎永は、広松を止めない。広松は切腹し、息子の文太郎に介錯してもらう。これで状況の過酷さを否定することはもうできない。吉井家は本当に負けてしまった。

紅天

...と思っていたところだが、実際にはそうではない。鞠子とのプライベートな会話では、広松は虎永が敵に降伏したように見せかけるため、自ら切腹することを決めたと明かす。敗戦が迫ってくるなか薮重とブラックソーンが和解することを正確に予想した虎永は、鞠子も彼らと一緒に大阪まで派遣し、黒船の攻撃の準備をする間大老衆に関わる秘密のミッションを任せる。今までずっと、虎永は紅天作戦を成し遂げる予定だった。エピソードの最後のシーンでは、虎永は息子のお墓を訪れる。長門の死だけは予想できなかった出来事。虎永は降伏が迫ってくるこの重要なときに、長門と広松が計画を立てる貴重な時間を稼いでくれたことに感謝する。虎永が何の方法で佐伯による江戸の包囲を抜けるか、鞠子はどう石堂と落葉と大老衆をアプローチするか、そしてブラックソーンと薮重の間の盟友関係が続き二人のミッションが成功するかは、今の時点では全て分からないままだが、次のエピソードは刺激的な結末に向けて幕を開ける。来週:紅天!

写真提供:FX

ベンジャミン・ローズはワシントンD.C.出身の詩人。「エレジー・フォー・マイ・ユース」と「ダスト・イズ・オーバー・オール」を2023年と2024年に発刊。アメリカカトリック大学で英語学を専攻し、2023年にオへーガン詩賞を受賞。2019年から「ザ・パス」のブログを編集している。彼の本はこちらから購入可能。

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